収納が多い家は、住みやすい?──“量”より“配置”が暮らしを変える本当の話#column
◆こんな人に読んでほしい
- 「収納が多ければ快適」と思っている方
- 家づくりで収納の場所に迷っている方
- 実際の生活動線を意識した間取りを知りたい方
- モデルハウスの見学ポイントを知りたい方
◆冒頭:収納の数に“満足”しても、暮らしに“満足”できない家がある
家づくりでよくあるリクエストのひとつに、「とにかく収納をたくさんつけてほしい」という声があります。確かに、モノが多い現代の暮らしでは、収納は安心材料のひとつ。
でも実は、収納が“多い”というだけで満足できるとは限らないのです。
むしろ、「必要以上の収納」が暮らしを窮屈にしたり、生活動線を邪魔したりするケースも少なくありません。
◆実話:収納のせいで、家の中が“動きづらくなった”家庭
埼玉県に家を建てた山田さん一家(夫婦+子ども2人)。家づくりのとき、最もこだわったのが「収納力」でした。
- 玄関には大型シューズイン収納
- キッチン裏には壁一面のパントリー
- 子ども部屋には備え付けのクローゼットと棚
- 階段下のスペースもすべて収納に転用
完成した家は、収納がとにかく豊富で、打ち合わせ時は「完璧」と思えたそうです。
ですが、住み始めて半年後——
「収納が邪魔で動きにくい」
「何をどこにしまったか分からなくなる」
という予想外のストレスがじわじわと湧いてきました。
◆問題は“量”ではなく、“配置と意味”
山田さんの家では、キッチンから洗面所へ向かう通路に設けた収納棚が、家族の“通り道”を物理的に狭めてしまっていました。
特に朝の時間帯、家族が同時に移動するとぶつかり合い、動きづらい。
しかも、その収納に入っているのは年に数回しか使わない季節用品や古いプリント類ばかり。
収納はあるのに、快適じゃない──これは“どこに・なぜ”収納を置いたか、の視点が抜け落ちていたからです。
◆収納の安心感が「モノを増やす口実」になる?
人は、「スペースがあるから」と思うと、なかなか物を手放さなくなります。
これが、“収納が多すぎる家”に起こるもうひとつの問題。
しまう場所があるから、取っておこう。
その結果、家はどんどんモノで埋まっていく。
そして、収納は満杯になるけれど、どこに何があるか分からなくなる──そんな逆転現象が起こります。

◆図面だけでは気づけない「使いにくさ」。どう発見する?
収納の配置が本当に正解かどうかは、図面やCGパースでは分かりません。
なぜなら、「そこを毎日通ること」や「家族全員がすれ違う場面」は、紙の上では再現できないから。
そこで重要なのが、実際の空間を歩いて確かめる体験。
モデルハウスで収納を見るときは、以下を試してみてください:
- 扉の開け閉めが他の動線をふさいでいないか?
- 収納の奥行きが深すぎて、取り出しにくくなっていないか?
- 自分の暮らしに置き換えたとき、そこに何を入れるか具体的に想像できるか?
この“体験型チェック”が、実は収納の成否を決める最大の鍵です。
◆失敗しない収納の考え方:3つの原則
1|「なんとなく」ではなく「明確な目的」で設ける
→ 何をしまうのかを決めずに収納を作ると、不要なモノの避難所になります。
2|“通る道”に干渉しないように設計する
→ 収納が人の動きの中に割り込むと、ストレスのもとに。動線ファーストで配置を。
3|数より質。「ちょうどいい量」を目指す
→ 必要なモノを必要な場所に置けるのが、真の快適収納。余分はムダになります。
◆まとめ:収納は“しまう”場所ではなく、“暮らす”場所の一部
収納は、モノを片付ける場所というだけでなく、**日々の暮らしの流れの中に組み込まれた「動線の一部」**として考える必要があります。
見た目の安心感に惑わされず、「ここに本当に必要か?」「暮らしの流れを邪魔していないか?」を基準にして、最適な収納計画を描いてください。そして何より、自分の体で「使いやすさ」を体感すること。
図面の上では分からない気づきが、展示場には詰まっています。