なぜ人は家を建てるのか。形よりも、“拠り所”をつくるということ #column
「賃貸でもいいのに、なぜ家を建てるの?」
ある友人にそう聞かれたとき、私は少し答えに詰まりました。
たしかに、家を持つことにはお金もかかるし、手間も増えます。
それでも、“自分の場所を持ちたい”という気持ちは多くの人の中にあります。
家づくりは、理屈ではなく「心の動き」からはじまるもの。
でもそこには、ちゃんとした理由や、知っておくべき現実もあるんです。
この記事を読めばわかること
- 家を持つことのメリット・デメリット
 - なぜ人は“自分の家”を求めるのか
 - 家づくりがもたらす安心と責任のバランス
 - 「拠り所」としての住まいの意味
 
1. 家を持つことで得られる安心感
マイホームを持つ一番のメリットは、「安心感」だと思います。
「家賃を払い続けるより、いずれは自分のものにしたい」
「子どもに“帰る場所”を残したい」
そんな思いから家を建てる人は多いですよね。
どんな日も帰る場所が決まっているというのは、実はとても大きな精神的支えになります。
さらに、ライフスタイルを自分好みにできるのも大きな魅力。
壁の色も、キッチンの高さも、照明の明るさも、「自分たちに合わせて選べる」という自由は、賃貸ではなかなか得られません。
自分でつくった空間だからこそ、愛着がわく。
その積み重ねが、暮らしの“居心地”を育てていくのだと思います。
2. 反対に、家を持つことのデメリットも
もちろん、家を建てることには“現実”もあります。
まず大きいのが、ローンという長期的な責任。
35年ローンという言葉を聞くだけで、ちょっと身構えてしまいますよね。
家を持てば、固定資産税や修繕費などの維持コストも発生します。
設備の故障、外壁の塗り替え、庭の手入れ──。
思った以上に“家も生きている”という実感を持つことになります。
けれどそれは裏を返せば、「家と共に自分たちも育っていく」ということ。
面倒も愛着のうち。
10年、20年と住み続けるうちに、家の変化が家族の歴史になっていくんです。
3. 「買う」ではなく、「つくる」という選択
よく、「家を買う」という言い方をしますが、注文住宅の場合、それはむしろ“つくる”に近い行為です。
間取りを考えながら、
「この窓から見える景色は朝がいいかな」
「子どもが大きくなったら、ここを仕切れるようにしよう」
そうやって悩んで、考えて、描いていく。
そのプロセスの中で、家は自分たちの生き方を映す鏡になります。
たとえば、リビングを広くとる人は「家族の時間」を大切にしているし、ワークスペースを充実させたい人は「自分の成長」に重きを置いている。
図面の一枚一枚に、「どんな人生を送りたいか」がにじんでいるんです。

4. 「所有」ではなく、「拠り所」としての家
最近では、「賃貸で十分」と考える人も増えました。
それはとても自然なこと。
モノを持たない暮らしが増えた今、家を持つことは必ずしも“正解”ではありません。
でも、“家を持ちたい”という感情が消えることはないと思います。
なぜなら、人は“自分を取り戻せる場所”を本能的に求めるから。
外では頑張って、気をつかって、誰かに合わせて生きる。
だからこそ、何者でもない自分に戻れる場所が必要なんです。
壁の色、木の匂い、暮らしのリズム。
それらが自分のペースに合っているだけで、家は“安心”をくれる存在になります。
5. 家を持つことの「自由」と「責任」
マイホームには、自由と責任がセットでついてきます。
でも、だからこそ得られる喜びもあります。
「この壁紙にしてよかった」
「この場所に窓をつけて正解だった」
そんな小さな満足の積み重ねが、毎日のモチベーションになる。
逆に、失敗した部分も“経験値”として残っていく。
それもまた、自分たちの家を“育てる”感覚につながります。
家は完成した瞬間がゴールではなく、暮らしていくことで完成していくもの。
それを体感できるのが、「家を持つ」最大の魅力なのかもしれません。
まとめ
家を持つことは、単なる資産形成でも、夢の実現でもありません。
それは「どう生きたいか」を形にするひとつの手段であり、“自分たちの拠り所”を見つけるための過程です。
手間もお金もかかるけれど、その分だけ「自分の人生と向き合う時間」を与えてくれる。
もし今、家づくりを考えているなら、間取りや設備の前に、一度立ち止まってみてください。
「自分にとって、家とは何だろう?」
その答えを探すことこそが、本当の意味での“家づくり”の第一歩かもしれません。


